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【TAKE ACTION】Vol.3_深津真弓さん|日本産婦人科専門医・医学博士・美ら海ユースクリニック代表

【TAKE ACTION_Vol.3】  


「アクションするひと」をテーマに、様々な場所で活躍する女性たちの素顔を紐解く連載インタビュー。
女性たちのこれまでの歩みと、BRÁCTが掲げる「今、わたしを愛するアクションを」という合言葉を軸に、
より健やかに心地よく生きるためのヒントを探ります。  

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まだ暑さが残る9月、沖縄県北部で産婦人科医として活動しながら、沖縄県初のユースクリニックを開設した深津真弓さんを訪ねました。
思春期から老年期まで、数多くの女性と向き合ってきた深津さんとの時間は、心のつかえをほどいていくような温かいパワーを宿しつつも、本質を突く言葉にはっとさせられます。
つい頑張りすぎてしまう女性たちへのメッセージと共に、ご自身のための“アクション”を伺いました。

ーーーなぜ医師の道に進まれたのですか?


家業が薬局で祖母が薬剤師、叔父が医者という医療がすごく身近な環境で育ちました。
小さい頃は調剤室にある薬瓶や顕微鏡などをおもちゃ代わりにしていて、
はじめは「こういう物を使えるなら、薬剤師いいな」と思っていたのですが、
より直接自分の手で人を助ける仕事がしたいと考えたときに、それって医者なのかなと。
小学生の頃には医者になりたいと思っていました。



―――医療にも様々な分野がありますが、なぜ産婦人科医に?


もともと子供が好きで、子供に関われる科がいいと思っていました。
でも、小児科はちょっと違うなと思ったんですよ。
病気の子供と向き合うことって結構辛いなと思ったんですよね、子供が好きだと。

大学1年生の頃、夏休みに見学実習みたいなものを募集している科がいくつかあって、その中にたまたま産婦人科があったんです。
そのときは産婦人科医を目指していた訳ではなかったのですが、「子供とも関われるし面白そう、どんな場所か見てみよう」と思い参加しました。

それで、実際にいのちの誕生に立ち会って『すごく神秘的』と思ったのが大きなきっかけですね。
同じお産でもやっぱり一人一人違うし、いまだにお産のときは毎回すごいなぁ、と感動します。

ーーーもともと埼玉の大学病院にお勤めでしたが、関東と沖縄県で違いを感じることはありますか?

一番は若年妊娠が多いことですね。
埼玉の大学病院に勤めていたときは、中高生で出産までする人は年に1~2人程度。
それが沖縄では17、18歳で妊娠しても、母親や祖母の代も若いときに産んでいたりするから、家族がバックアップする体制もあるし、若くして子ども産んで育てることに違和感を持つ子が少ない印象です。

しかし、妊娠・出産するということは当然学校を休学・退学しなければならないこともあり、教育の機会を奪われてしまうことが問題です。
中卒という学歴になれば選べる職業も選択肢が狭まり、パートやアルバイトでなんとか稼ぐという状況になりますが、それだけでは満足のいく額にならないこともありますよね。

また、多産になることで日々の生活に追われ、貧困に繋がる流れが出来上がってしまっています。
実際に沖縄の教育現場でも若年妊娠に対して危機感を持つ方が多いですが、他所から来た人間からみても大きな課題だと感じています。

ーーー若年層への支援として「美ら海ユースクリニック」を開設されましたが、どのような経緯でスタートされたのでしょうか?

実は、はじめからユースクリニックをやろうと思っていたわけではないんです。
少し話が逸れますが、私は元々家系的に直感が鋭い感覚を持っていて、医療が身近にある一方で、目に見えない感覚があることも当たり前な家庭環境で育ちました

2018年頃から医業の傍ら、そうした感覚を活かしてカウンセリングやヒーリングの仕事をするようになりました。
最初はそうした女性のためのカウンセリング外来のようなものを始めようかと考えていましたが、若者を支援するために何かできないかと調べていくうちにユースクリニックの存在を知って。
沖縄の課題も目の当たりにしていたし、まずは「場」をつくることから始めようと考えました。
私自身も性教育について勉強しながら、現在は月1のペースで開催しています。

「自分に嘘をついていないか?」と自問自答してみてほしい。

 

ーーー多忙な女性たちのなかには、「多少ストレスや不調があることは当たり前」と認識し、つい頑張りすぎてしまうケースが多い様に感じます。早期に心身のSOSに気づくために必要なこととは?

本当はね、みんな気づいていると思いますよ。ちゃんと、もうしんどいって分かってる。
ただ、気づいていてもそのままにしてしまう人が圧倒的に多いの。
周囲の目を気にして『この歳の女性だったらこうあるべき』『母としてこうするべき』『まわりに頼ってはいけない』といった思い込みを自分のなかで勝手に作り、対外的な自分を守るために自分を傷つけ続けている人が多いように感じます。 

いかにこの「気づき」を、自分の中で行動を変えるための材料にできるかが重要ですね。

 

ーーー世の中の女性へ一言メッセージを伝えるとしたら?

“自分を大事に”かな。
これまで多くの女性を診てきて感じることは、とにかく楽をすることへの罪悪感がすごいんです。
楽をするって悪だと思われがちだけど、お母さんだって家事を休んでもいいし、
旅行に行ってもいいし、「もっと楽していいんだよ」と伝えたいですね。

ーーー深津先生がご自身のこころとからだのために行っている「アクション」を教えてください。

昔は過労死ラインなんてとっくに通り越しているような勤務時間で仕事をしていた時期もありましたが(笑)、
今はハードな働き方をやめました。
私の場合は身体を壊してしまい、主治医から過労がだめだよと言われたことがきっかけでした
当時は大学病院に残ってバリバリ働くつもりでいたので、それができない自分に腑甲斐なさを感じたり、みんな一生懸命働いているなかで、何もしていない事に罪悪感もあったんだけど、自分が出来ることを出来る範囲ですればいいじゃん」という考え方にシフトしたんですよね。

そこから少しずつ自分に合う働き方に調整していって、自分の時間を増やしていきました。
沖縄に来てからは時間の流れがゆっくりだし、人ものんびりな人が多くて、
もちろん仕事の内容としてはシビアなときもあるけれど、以前に比べ心の余裕ができたように感じています。

世の中の女性たちもすごく頑張りすぎてしまうところがあるから、最初は大それたことじゃなくても「今日はちょっとのんびりしようかな」くらいのことから、是非アクションしてみてほしい。

 

ーーー今後チャレンジしたいことはありますか?

将来的に、心と身体のメンテナンス施設みたいなものをつくれたら面白いなと思っています。
どうしても医学と自然派思考って敵対しがちなのですが、私にとっては「医学」も「目に見えないもの」も、どちらも別のものではなく一つの概念。
それぞれのいいところを組み合わせちゃえばいいのにってずっと思っていて。
一般的にはそれを統合医学って言ったりすると思うんですけど、それよりももっと広いものが私の感覚ではありそうな気がしています。
どんなものを信じているひとであっても、ここにくると心地良いよね、と言ってもらえる場所をつくっていきたいですね。




Profile

ふかつ まゆみ|日本産婦人科専門医・医学博士・美ら海ユースクリニック代表
東京都出身。2007年医学部卒業。2021年に沖縄へ移住。沖縄県北部で産婦人科医として従事。意図しない妊娠をきっかけに高校中退など教育の機会を奪われてしまうことは、貧困の問題も含めて沖縄県の課題と感じ、勤務先のひとつである美ら海ハシイ産婦人科協力の下、沖縄県初のユースクリニックを開設。

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